夏が来る。
山では、すでにうざい虫が飛び回っているが、これから夏に向けて、虫はどんどん増えてくる。
夏といえば、蚊だが、ここには、あまり蚊がいない。
ただ、年々増えてきてはいる。
結局、餌となる動物がいなければ、蚊もいる意味がないので、今までいなかったのだが、僕とか犬とかヤギとかが住み出したので、餌が増えてきてしまい、そのために、蚊も増えてきているというわけなのだ。
蚊というのは、あまり飛行距離が長くない。
なので、僕の住んでいる小屋から、ほんの30mほど先にある池に行くと蚊がいる。
しかし、小屋までは来ないほど、距離を飛ばない。
そんなわけで、蚊の心配はあまりないのだが、多くの人たちが、それほど遭遇しない連中と対峙することが、この山では多くある。
まずは、春には、小型の吸血ハエである「ヌカカ」
たぶん、ブヨの仲間と思われるが、とても小さい。
ヤギの周りにたかっていて、ヤギの近くにいると、人も噛まれてしまう。
春の終盤では、目に飛び込んでくるタイプが登場してくる。
こちらは、さらに小さく、アミアミ帽子の網目が細かくないと入られてしまうし、隙間があると容赦なく入ってくるので、とっても厄介なのだ。
今の時期を過ぎると、小さな羽音と共に、足元から忍び寄ってくるのが、ブヨである。
ブヨは、常に足元を狙ってくるので、長めの靴下と長ズボンさえ履いていれば、ブヨにやられることはない。
気温がぐんぐん高くなり、いよいよ夏本番となると、宿敵アブが出現してくる。
アブは、高速でまっすぐ飛ぶため、噛まれて実害に会うことはほとんどない。
ただし、めちゃくちゃウザい。
さらに、アブでもブヨでも、室内に入ると、ジッと身を潜め夜を待つ。
明け方になると、ゆっくりと出てきて、寝ている人間(動物)に、そっと近づいてガブっとやる。
そのために、室内には、絶対に入れてはいけないのである。
今までは、この山に来たときに作った網戸だったが、それを、マグネット式の網戸に変更した。
さらに、ドアには、勝手に閉まるドアクローザーを取り付け、ドアストッパーも取り付けた。
当初は、ほとんど人が来ることもなかったし、自分一人だったため、ドアを確実に閉めるとか、網戸を隙間ができないように閉めておくというのは、自分一人が気にすればいいことだったのだが、少しづつ、人が来てくれるようになり、ドアの閉め忘れなどが、ちょくちょく見られるようになってきた。
それもそのはずなのが、一般住宅には必ずついている、ドアクローザーがうちには付いていなかったので、勝手には閉まらないかったのである。
通常、「カチャッ!」というまでドアを閉めることをしない。
そのため、多くの人が、勝手に閉まるものと認識しており、ドアの閉め忘れが多かったのだ。
そんなわけで、普通の家と同じように、ドアが勝手に閉まるように、ドアクローザーを導入した。
網戸を、マグネット式にしたのも同様の理由で、今までのドア式の場合は、やはり手動で閉めなければならなかった。
それを、マグネット式にしたことで、素早く確実に網戸を自動で閉じることができるようになったのだ。
他人の家に行き、そこが引き戸だった場合、引き戸を確実に閉めるというのは、自分が客の場合、あまりキッチリと閉めない場合が多いのではないだろうか?
それは、きっちり閉めようとすると「ピシャっ!」という音が響き、何だか、ちょっと怒っているように感じてしまうのではないか?などと思ってしまう。
かと言って、ゆっくりと慎重に確実に閉めることが出来るかというと、その扉の特性を知らないと、何とも、やりにくい。
そうなると、ちょっと、中途半端に隙間が空いたままにしてしまうということが起こる。
それが原因で、室内に虫が入ってしまうことになるのだが、やはり、それは来客の責任ではなく、家主が気にしておくべき点だろうと思っている。
引き戸の場合でも、今では、オートクローザーが売っている。
バネとワイヤーで、引き戸を閉める機構になっているようだ。
そんなわけで、初めてここを訪れた人でも、気を使わないでいいようにしたのが、ドアクローザーとマグネット式網戸なのである。
さらに、ドアストッパーは、今までは、使っていない5kgのバーベルでドアを止めていたが、一般的なドアストッパーにした。
これも、誰でも使うことが出来るように考えてのことである。
こうしたことは、来てくれる人のためのようにも思えるが、結局は、自分のためである。
僕が、朝目覚めた時に、虫に噛まれていないようにするという目的が一番なのだ。
自分のことを一番に考える僕の考え方である【超自己中的主義】であるが、自分のことを究極的に第一に考えると、結果、他人のとっても非常に良い結果を生むという理屈がここでも当てはまっている。
僕の人生において、この超自己中的主義が中心の考え方で、自己犠牲の上にある他者への貢献というものは完全に否定しているし、最大の貢献にはならず、長続きもしないと思っている。
自分の喜びや幸せを共有することで生まれる、他者の喜びや幸せから、自分への最大のメリットが発生するという考え方は、是非多くの人たちに知って欲しい考え方なのだ。
ドアの改修の話から、ずいぶんと大袈裟な話をしているが、まあ、お越しになってうちの小屋のドアを開けたときには、『閉めなくてはならない』ということは、どうぞお気になさらずに。
追伸
虫に「噛まれる」という表現を使っている。
蚊の場合は「刺す」が、ハエの場合は「噛む」のである。