うまいピッツァが食べたい
という思いは、昔からあったが、今の今までピザ窯を作るということはなかった。
本宅が完成したら作ろうと思っていたためだ。
しかし、ずいぶん前に山友が「アースオーブンを作りたい」と言ったのを機に、まずは、住んでいる小屋の隣に屋根をかけた。
アースオーブンには、屋根が必要だが、窯の上だけに屋根を作るというのがもったいないと思ったので、10坪ほどの場所全体に屋根をかけることにしたのだ。
窯は、土作りなので、寒い時期にやるのは土が冷たくて楽しくない。
そこで、ボチボチ暖かくなってきたのを機に、やり始めることにした。
土台は、石組みに決定。
作業場やログガレージで整地した際に出てきた石がたくさんある。
ログ組の土台も考えたが、やっぱり、やったことのないことにチャレンジしてみたいのだ。
この山で出る石は、正直あまり頑丈そうではない。
一つは、金属を含んでいるのか錆びたような色をしていて、地層のようなラインがあり、強い衝撃が加わると、そのラインに沿って割れる。
もう一つは、かなり硬いが、土が高い圧力によって固まったような石で、削ってみると結構簡単に削れていく。
三つ目は、たぶん砂岩で、こちらは、大した衝撃じゃなくても簡単にパッカリと割れてしまう。
それでも、そんな石が岩になり、それが岩盤となって、この山を支えている。
集まって固まっていれば、それはそれで、強固になるのだろう。
そう思い、あまり気にせず石を積んでみた。
石積みの上には、土作りの窯が乗るだけなので、それほどの重量はない。
石がずれて崩れない限り大丈夫だ。
試しに、上に乗って、ぴょんぴょんとジャンプをしても平気だし、石がずれないように念のためセメントで固めておいたから、まず大丈夫だろう。
予想外だったのは、1m x 1mほどの床が必要だったが、石を積んでいくにしたがって、上の方が細くなってしまったこと。
考えてみれば当然のことで、どんどん細くなってしまったが、なんとか小石でごまかして80cmは確保した。
窯床となるレンガを並べて、竹で窯の形を作って、そこに新聞紙などを貼り、その上に土を盛っていく。
この作り方も、実際に、正解がどんなものなのかはわからない。
ただ、ずっと前に、麓に住むイチローさんから『石窯のつくり方、楽しみ方』という本をもらっていたので、参考にした。
ググっても、今の時代は、それなりの情報が出てくるが、大まかに参考程度にして、極力自分で考えてみるほうがいい。
時代が進んできて、人はどんどん自分で考えることをやめてしまった。
世の中で『頭がいい』と言われるのは、『記憶力がいい』ことと同義語になってしまっている。
試験など、とにかく記憶すれば合格する。
論文などのいかにも自分で考えるような問題であっても、セオリー通りであれば評価され、そこから外れれば落とされる始末だ。
僕には、ずっと忘れられない嫌な思い出がある。
中学生の時、美術の時間に、好きな絵を描くというものがあったが、教師の理解できない絵を描いていたらしい僕は、美術の成績を落とされた。
凡人が理解できる答えを示さなければ落第なのだということを痛感した出来事だった。
僕は、昔から自分で考えるのが好きだった。
数学でも、公式を覚えるのは苦手だったが、公式で解く問題に対して、公式を使わずに自分で考えて解いていた。
こちらも、嫌な思い出があったのを思い出した。
数学の授業で、教師が問題を出した。
「答えがわかった人?」というので、僕は手をあげたが、僕以外に手をあげていたのは、クラスで最も勉強のできる女子一人だけだった。
教師は、僕ではなく、彼女を指名した。
結局、その問題の答えは、公式の予習をしていれば簡単に解けるものだったのだ。
僕は、公式を使わずに自力で解いたが、正しいのは予習をして公式を覚えていた彼女で、僕は答えを聞かれることもなく不正解の烙印を押された。
こんなことをいくつも経験していれば、学校が嫌いになるし、無意味だと思えるのも当然の結果だと、今更ながらに思う。
そんなわけで、建築も、土木も、極力自分で考えてやっている。
今回のアースオーブンも、自分たちで知恵を絞って作り上げて、それが、成功するか失敗に終わるかわからないが、試してみるということにワクワクするのである。
もちろん、どこかの誰かが成功したやり方を真似ればうまくいくだろうが、それはそれで参考にさせてもらって、自分たちが自分たちの使いやすいようにしたいし、デザインも自分たちの気にいるようにしたい、さらに、成功というものには上限がないのだから、さらに突き詰めて想像を超えたいとも考える。
アースオーブンは、これからが本番。
いよいよ本体を作っていく。
竹を組んだ際、針金を使ってしまったが、麻紐にしておけばよかった後で気がついた。
麻紐なら燃えてなくなってくれるが、針金は土に埋もれて残ってしまう。
でも、まあ、いいか、、、