しばらく前から、本宅予定地の開拓を進めている。
上に上がる道を整えて、斜面を切り崩し、それなりの範囲を整地したのだが、なんとなく、チマチマと同じ場所ばかりやっているのに飽きてきて、林の中を横断したくなってきた。
木々とシダの生い茂る中に突っ込んでいくのは、去年、現在の畑とヤギとニワトリ小屋のある場所を開墾した以来である。
林のままだと、そこに何があるのか?地形がどうなっているのか?または何が生息しているか?など、さっぱりわからない。
しかし、木を切って、草を刈ってみると、その全容が現れる。
昨年は、自分では、かなり広い範囲をヒーヒー言いながら開拓したつもりだったが、実際に開けた場所を眺めてみると、ほんの100坪程度の場所でしかなかった。
その中に無数の木々が伸び、草が生え、地面を覆い隠していた。
予想していたよりも、急勾配で、クボちゃん(ユンボ)で入っていくのが怖く、結局、人力でやった。
今回は、人力では、あまりにも大変だったことから、クボちゃんを駆使して、急斜面であっても道を作りながら開拓していく。
斜面の高い方の土を崩して、低い方へ積み、少しずつ道を作っていきながら進む。
途中の木はチェーンソーで伐採し、すぐに抜根して、なるべくクネクネさせないで真っ直ぐに横断していった。
今までは、出来ること、簡単なことを優先して、難しいことは後回しにしていた。
そのため、あとのツケが大きかった。
とはいえ、以前は、出来なかったことが多すぎて、その都度、難しいことに対処していては、まったく前に進めず、やった感が小さく、モチベーションが下がっていたかもしれないことを考えると、仕方のない遠回りだった。
今では、随分と慣れたもので、ほとんどのことに対処できるようになってきた。
以前のように「どうしたらいいのか?」と思い悩むことはあまりない。
今回、開拓していく中での第一の問題は、倒れている極太の松の木の処理と、その根を引っこ抜く抜根処理だ。
以前は、やってもやっても抜けない松の木の根は、地面ギリギリで切って土で覆って仕舞えばいいことにしていたが、今回は、そうはいかない。
松の根というのは、杉や檜と違って、ものすごく太い。
根というよりか、木の幹がそのまま地下にあるような感じで、1mほど幹と同じ太さで地下に潜っている。
そこから、太い根が四方に広がっている。
そのため、こいつを引き抜くには、最低でも周辺を1mほど掘り下げなければならない。
その間、横に広がった根っこに行手を遮られてしまうので、簡単には掘り進められないのだ。
以前なら、前述したように、途中で諦めてしまっていたが、今は、根気よく掘り進めていけば、必ず根を抜けるとわかっているので、根気よく時間をかけて挑んでいる。
そうして、一つ、また一つと抜根していく。
転がっている倒木も、こまめにチェーンソーで切断し、木を寄せながら前に進んでいく。
以前は、クボちゃん(ユンボ)の操作に不慣れで、木をバケットに乗せるのに時間がかかっていたが、今では、ひとすくいでバケットに乗せることができるようになったので、木の運搬もお手のものだ。
最後の試練は、夕方、もう作業を終えようとする頃に起こった。
水道管がどこを通っているのかわからないが、そろそろ、ある頃だと思っていたところ、予想よりも少し手前にあり、またやってしまった。
水道管の切断だ。
クボちゃんのエンジンを止め、ふと横を見ると水溜りができていた。
「あれ?」と、思ったら、やっぱり・・・
しかし、水道工事も慣れたもので、焦ることもなく、元栓を止め、在庫の部品を見つけ対処にかかった。
だが、水道管の太さが違っている。
貯水槽から出ている水道管の太さは、30mmの太いホースを使っていたのを思い出した。
一般的には、20mmが元のホースで、各所に送水されるのは13mmなのだが、ここは30mm。
在庫はないし、ホームセンターにも売っていない、さらに、ネットでも在庫品ではなく、取り寄せ品となり、最低でも一週間はかかる部品だ。
今までなら、こんな状況では、頭を抱えていたのだが、今では、すぐに、どう対処すればいいか思いつくようになった。
とりあえず、水が多少漏れたとしても、水道管用のテープを巻きつけておけば、水の送水は可能だ。
このことは、冬にお風呂の凍結を防止するため、新しい凍結防止ヒーターを導入した時に知った。
よく水道管などにグルグル巻きにされている銀色のテープ。
こいつは、水漏れも防いでくれる。
試しに、二つのホースをテープでつなぎ合わせて送水してみたところ、水漏れもせずに送水できた経験があった。
その経験があったことが役に立った。
ホームセンターで、テープを買って駐車場に戻ると、そこに、水道屋のジャイアンがいた。
ジャイアンに「また、水道管切っちゃったよ」というと、建材屋さんを紹介してくれるという。
以前にも言われていたのだが、大量に必要になったら頼もうと思っていたのだ。
ジャイアンの行動は早かった。
「電話しとくわ」と言って、すぐに電話をし始め「今から行くけん」と話をつけてくれた。
そのまま、建材屋さんへ行ったのだが、僕の中では、『さすがに、30mmの分岐栓(チーズ)はないだろう』と思っていたのだが、あった。
良くこんな物を在庫しているものだと感心したが、ジャイアン曰く「なんでもあるけん」とのことだった。
そんなわけで、その日のうちに水道菅の修復は完了した。
あらためて、この4年間を振り返ってみると、ほんと、いろんな経験をしたと思う。
浜松にいても、東京にいても経験しなかったことが、この愛媛の山ではたくさん経験をしている。
人生は、経験をすることを目的にしていると思うが、まだまだ、経験していないことは、当然、山ほどある。
もちろん、今の人生で、この世の多くを経験することは不可能だが、それでも、なるべく多くのことを経験できるのは楽しい。
実際、試練や困難によって学ぶことは多い。
普通、試練や困難は避けたいと思う。
もちろん、僕も、そうしたことはなるべく避けて通りたい。
しかし、振り返れば、試練や困難に立ち向かう時、克服する時に大きな経験をし、それが、のちの経験を助ける手立てになるということも事実だ。
今後も、多くの試練や困難に遭遇するだろうが、そのことが、自分の知識を豊かにし、知恵を授け、次の試練や困難に立ち向かう武器になっていく。
開拓は、まだまだ先は長いが、いつかは終わる。
新しい土地ができるのが、とっても楽しみである。