生命保険と遺影写真

「永田さんも、もしもの時のためにそろそろ保険に入った方がいいですよ。」

いつも、そうして税理士さんに勧められるのだが、

「いや、僕には何も起こらないですから。大丈夫です」そう断っている。

どう考えても、保険なんてもったいない。

「それなら、保険料は高いけど、こっちなら返戻率が 98% とか、

この年齢なら 108% になりますから貯金みたいなモンですよ」

掛け捨てじゃなくて、積み立て式の保険ということだ。

「ふーん、まあそれなら損するわけじゃないから、いいかな」

ということで保険に入ることになったわけ。

みんな結構生命保険に入っているけど、

あれって“もしも”のために入っているんだよな。

よくそんな“もしも”の時なんて考えるなぁ。

本当に、その“もしも”がきたらどうなるんだろう?

ふと、そう思うと、 1 つのことが思い出された。

ある日、 CNN ニュースを見ていると、殺害されてしまったという親子のニュースをやっていた。

そこに写ったのは、アメリカ人の親子、パパと 10 歳くらいの男の子の写真、

どうやら親子で釣りに行ったときに撮ったもののようだ。

2 人ともいい笑顔をしている。

その後、日本のニュースを見ていると、

男性が殺害されてしまったというニュースをやっていた。

そこに写ったのは・・・・赤い顔をして居酒屋でピースをしている中年男性。

この差はなんなんだ。

居酒屋でピースのあの男性は、全国にあの姿が流れ、

デジタル加工してなんとか見れるように修正した写真が遺影になってしまうのか!?

そう思うと、ちょっと悲しくなってきた。

まあ、きっと彼も“もしも”のことは考えてはなかっただろうけど、それでも・・・

僕は、写真に携わっているのでこんな風に感じるのかもしれないけど、

まず第一声は、僕なら「あの写真が全国に流れるのは勘弁して欲しい」と思うよ。

事前に家族や会社のみんなに頼んでおかないと。

「もしもの時は、この写真(超カッコイイやつ)を使ってよ」って。

遺影って、ずっと以前から大事だと思っていたけど、対象は 60 歳以上だと考えていた。

しかし、最近、 30 代・ 40 代の人でも「遺影に使う」という人が結構増えている。

逆に“もしも”が全く起こらなかったとしても、

自分の写真を残しておくのは良いことだろうし、

「写真写りが悪くって・・・」という人でも、

ALIA に来てくれれば、ほとんどの人は写真写りに悩まなくてもいい。

写真写りの善し悪しの原理さえ分かってしまえば

意外と写真写りを克服する事なんて簡単なことなのだ。

さらに、写真を撮ることは、もっと大きな貢献をしてくれる。

これは、 ALIA に来たお客さんから聞かされることなので、

初めから想定していたわけではないのだけれど、

多くの人が

「自分を見つめるきっかけになった」

「自分のことが少し好きになった」

「私ってこんな表情するんだ」

「横顔とか後ろ姿って自分では見えないけど、結構好きかも」

そして

「なんだか、人生が変わってしまう気がする」

なんてことを言う。

なぜ、人生までが変わってしまうんだろう。

きっと、「自分に向き合う」ということって、通常あまりしたことがないかもしれない。

自分に向き合うことで、

自分がしたいこと、

自分が行きたい先、

自分が歩んできた道、

自分の産まれてきた理由、

自分の今、

自分の才能

そして

“本当の自分”というものにめぐり逢うのかもしれない。

僕が写真を始めたのは、高校 1 年生の時。

部活に入らないといけなくて、一番楽な部活を探すと、それが写真部だった。

そのときは

“ 1 枚の写真が人生を変える”

なんて、予想もしなかった。

でも、今、人生を変えてしまうほどの体験を

年間 2000 名に提供しているなんてことを考えると本当に不思議だ。

僕自身も、違う意味で“写真で人生が変わった”人間の 1 人なのだと実感する。

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