フォトグラファーになるために、初めて教わったこと

僕が、フォトグラファーというか、写真の撮影会社に入って、初めて教わったことは撮影のやり方ではない。

一番初めに教わって、二十年経った今でも大切に思っていること。

それは、「構え」だ。

それも、よく言われる、脇を締めるとか、安定させるとかではない。

「いかに、カッコいいか」

これに尽きた。

ウェディングの撮影だったため、相手は、素人のお客さん。

さらに、撮影現場となる結婚式の会場には、数十人から数百人の人たちがいる。

その人たちが、フォトグラファーに注目しているわけではないが、ほとんどの人たちが座っている中を、立って、動いて、構えて、カシャ!とかピカッ!とか、音や光を出すのであるから、多少は目立ってしまう。

そんな時、「人は見た目が90%」の理論が生きる。

見た目がダサいのと、カッコいいのでは、「邪魔だなぁ」と思われるのと「景色の中の一つ」とも思われず気にされない、または、いい意味で気にされる。ほどの、違いが出るものなのだ。

以前に、USJ:ユニバーサルスタジオジャパンへ行ったとこのこと。

野外で行われる、ダンスショーを見に行った。

そこには、20人くらいのダンサーが登場するのだが、その中で、さほど踊りはしないダンサーがいる。

どちらかというと、その人たち(5、6人)は、観客を盛り上げるための役目らしいのだが、手にはカメラが持たれていて、観客を盛り上げながら写真を撮っている。

そして、結果、その写真をネット販売する。という手法を見た。

カメラマンというのは、目立たずに目的を達成するという一般常識から外れ、演出の中の一部として撮影を行うということをしていたのだ。

僕が二十年前に教えられてのも同じことだった。

フォトグラファーは、カッコよくなくてはならない。

そして、それは、まず第一に「構え」にある、と。

多くの人たちが、カメラを落とさないように、首にストラップを掛けるのに対して、二台のカメラを両肩にかけるスタイルだった。

普通に、肩にかけるだけだとカメラがブラブラしてしまい、横にぶつかる可能性がある。

そのために、レンズを内側へ向け、ボディーは脇腹、レンズは背中に沿うようにして、常に、右手はグリップに手をかけて固定する。

そうすると、正面から見た時には、ほぼカメラが見えないのだが、撮影する瞬間に、ストラップを肩からおろし、脇の下からカメラがニョキッと現れる。

カメラのレンズというのは、相手を緊張させてしまう。

自分に向いてなくても「撮られるんだ〜」という意識が、当然働くものである。

それを、少しでも軽減するためには、カメラが相手から見えないというのは、効果的か、どうかはわからないが、そんな小さな配慮としても考えらえている。

撮る段階になって、初めてカメラが見え、素早く構えて、素早く撮影するのだ。

そして、最も初めに教えられた構えは、どんなものかというと、一般的に、カメラを持って撮影する時には、体は正面を向くものだが、僕が教えられたのは「斜に構える」というスタイルだった。

僕の場合は、利き目が左目なので、左足を前方に大きくだし、胸の方向は完全に横向きだ。

脇はグッと締め、体と腕とカメラが、一直線になっているように構える。

そうすることによって、前後に動きやすくなり、ズームレンズだけに頼らない、微妙な画角の調整が素早くできる。

さらに、正面に構えると、どうしても膝が曲がりやすくなり、体制が低い位置になってしまう。

女性は、特に上から撮影した方がよく見えるのだが、膝が曲がってしまうと低い位置からの撮影になりやすいのだ。

それに比べ、斜に構えると、膝が伸び、高い位置からの撮影が可能になる。

さらに、もっとメリットはある。

一眼レフカメラというのは、一般的には、利き目が「右」ということを前提に作られているようで、右目でファインダーを覗いた時に、左目はカメラボディーの外側に出る。

すると、ファインダーから見える景色と、肉眼で見える景色の両方を見ることができるのだ。

しかし、利き目が左の場合は、そうはいかない。

ファインダーを左目で覗いていると、右目は、カメラボディーに覆い隠されてしまう。

これでは、利き目が右の人よりも状況把握が難しい。

しかし、斜に構えるとどうか?

左目はファインダーを覗きながら、右目は、右側全周を確認できる。

右目利きのように、撮る対象を、両目で確認することはできないが、ウェディングという撮影現場においては、撮る対象以外に、周囲の状況を把握することは、とても大事なことなのだ。

とはいえ、当然だが、確認できるのは右側だけで、左側は全く見えないけども。

この「カッコよくなければならない」「斜に構える」ということを、一番初めに教わったことで、僕の人生は、世の中に溢れるほどいるフォトグラファー、それも、モデルを撮ったり芸能人を撮ったりするフォトグラファーではなく、営業写真館業界という、フォトグラファーという職業としては、地味な世界において、一定の結果を残すことができる布石になったのだと思っているのだ。


via Mark な 人生



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