昨日は、営業の最終日であり、誕生日であり、忘年会だった。
そして、2008年を締めくくるにふさわしいのか、そうでないのか、
まあ、とにかく珍しい人物の撮影を行った。
事の発端は、1本の電話から始まった。
最近、この手の繋がりからくる仕事が多いのだが、
2002年にウェディングの撮影をしたお客さんからの電話だった。
実は、その時の撮影は、忘れもしない出来事で、
ウェディング撮影で名を知られている「鈴木健治」氏と、
僕の2カメラマン体制での依頼だった。
自社での2カメラマンなら分かるが、
他社の初めて会う人物との2カメラマン撮影は
後にも先にも、これ一度きりだ。
もちろん、当時28才の無名の僕としては、
業界内でも有名な人物の次に選ばれたのだがら光栄なことだった。
さらに、当時、ウェディングでは、全くと言っていいほど
誰も使っていなかったデジタルカメラでの撮影を行った初めてのお客さんでもあった。
そのため、非常に記憶に残っていた。
7年ぶりの電話は「宣材写真を撮って欲しい」という依頼だった。
そこに現れた男は、なんと「松田優作」にずいぶんと似た人物だった。
何と言っても、声が図太い。
のど仏が、アゴについてしまいそうなほどに大きい。
まだまだ、未熟な点が多いが、
これから絶対に売れて行くであろう人物だった。
撮影自体は、いろいろなことを教えながら行っていった。
俳優を目指しているのだが、抜きんでた才能も表れなければ、
キャパも広くない。
そうした中で、こんな会話をした。
目が悪くレーシックをやりたいのだが、金がないと言っている。
(ちなみに僕もレーシックやりました)
しかし、たばこと酒は止める気はなく、自分のシンボルだという。
そこで・・・
「貧乏なくせに葉巻を吸っていて、これだけは譲れないというのならわかるが、
ラッキーストライクでは、あまりに普通。ただの凡人ではないか。」
「メシは?」と聞くとコンビニ弁当が多いという。
「つまらん、これで料理の腕が達者というのなら分かるが、コンビニ弁当では、それもまた凡人」
「凡人と違うのは、天からもらった肉体と声だけか。つまらん、つまらん」
と、こんな奈落の底に突き落とすようなことを言ってみた。
この言葉に、彼はどんな気持ちを持ったのか分からないが、
初めてまともに宣材写真を撮ったこと、
そして、それに40000円も使ったことも含めて、
12月29日という日が1つの転機となる日になったことは確かだと思う。
彼が、スクリーンに登場してくるのを心待ちにしたいと思いながら見送った。