美しさこそ、最高の機能

機能とデザインは、両立しない。そう言われることがある。しかし、美しいものは機能に優れ、機能に優れるものは美しいというのは、もはや証明された常識になっているように思える。

その最もたる現代の象徴が、iPhoneやMacだろう。

ジョアンサン・アイブ率いるAppleデザインチームが生み出す製品は、スティーブ・ジョブズがAppleに返り咲いた時から始まった。初代iMacにその原点が見られる。今まで、誰も想像しなかったコンピューターという機械に、丸みとカラー、そして透明という考えられないデザインによって世に放たれた初代iMacは衝撃だった。その後の快進撃と、究極のシンプルさゆえの美しさは、誰もが知るところだろう。Appleによって、シンプルは極限まで行くと美しくなり、それは機能を損なわない、いや、むしろ、機能的にさせることを世に知らしめた。

僕には、一つ忘れられない思い出がある。
お遍路で、四国を回っていたとこのことだ。当時、ブログにもそのことを書いたが、もう一度書いておく。東京からカレヤン(Porsche911 Type996 Cabriolet)で四国を回っていた。今でもそうなのだが、カレヤンを見てポルシェなのか、フェラーリなのか、そのどちらもさっぱりわからないなんていう人は、実は、たくさんいる。東京にいた時には、そうした人にほとんど会ったことがなかったので、なかなか驚くべきことであったが、田舎に行ってみると、ほとんど走っていないのだから、それも当然のことだろう。

お遍路で回っていた時も、車に近づいてきて、後ろのエンブレムを読んでいく人がいた。しかし、後ろには「Carrera」としか書いていない。なので、なんの車かわからないようだった。あるお寺に着いた時、駐車場の管理をしていた年配のご婦人に「きれいな車やね」と言われた。もちろん、洗車をしてあるとかいうことではなく、デザインが美しいという意味だ。僕も同感であるが、ご婦人は、ポルシェとかいう車のことがわかっていて言っているわけではない。ただ、車をみて「きれい」だと思ったのだ。

最高の機能と、美しいデザインを両立させているプラダクトが、iMacのずっと前から存在していたのだ。それが、ポルシェであろう。機能を詰め込み、デザインを最高に仕上げることまではできるとしても、それを、一般人が享受できるものとしては、Ferrariにはない特徴であると思う。

この記事、今更なぜ書いたのかというと、ブランチをしながら、むかし放送されたプロジェクトXをAmazon Prime Videoで見ていたのだが、その回が、新幹線だったのだ。もちろん、以前にも見ているのだが、新幹線の初期のデザインをする上で、デザインチームリーダーの三木さんが言っていた言葉が「美しいものをデザインすれば、機能も備えるものになる」ということ。今また、その言葉を聞いて、本当にそうであると確信する。

スティーブ・ジョブズが亡くなってから、Apple製品に確信的なデザインが生まれていない。ジョナサン・アイブはいるはずだが、やはり、そこにはジョブズがいたということは大きいのだろうな。

この世界に、次に生み出されるものは何なのだろう?
「誰かがやるのではなく俺がやる!」と言いたいところだが・・・
やっぱり、人が乗れる小型のドローンかなぁ?

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