今年の初めから、薪割り体験と称して、たくさんの人に来ていただいて薪割りをやった。
ずいぶんたくさんやったので、ずいぶんと長いことやっていたように思っていたのだが、実際に活動していたのは、今年の3月までで、ほんの3ヶ月というところだった。
どの程度の量の木を割り、薪だなに積み上げたのかわからないが、ざっと見渡す所では、今の僕の消費量であれば3年分くらいにはなろうかという所。
『今年の冬からは、楽になるなぁ・・・』と、安心していたのだが、実際には、そう簡単にはいかなかった。
初期の頃に割った薪は、ほぼ1年が経つので、いよいよ使ってみた。
しかし、その乾き具合は、予想とは大きく異なっていた。
ほとんどがヒノキのため、乾きも良いと思っていたのだが、燃やしてみると、火がつかない。
燃えてきても、ものすごく水蒸気が出て、まったく乾いていない。
なぜだ!?
と、思ったが、その原因はすぐにわかった。
薪にした木のほとんどは、僕が山に来た最初の冬に伐採して、倒しっぱなしにしてしまっていたもの。
それからすでに2年。
その丸太が、腐り始めていたので「これはイカン」と思い、急いで薪にしたのだ。
丸太を倒しっぱなしにして、そのまま腐れば土に帰るのだが、すっかり土になってしまうまでの期間は長い。
とはいえ、腐った丸太を引き出しても、なんの使い道もなく邪魔なだけ。
そのため、さっさと引き出して、薪にしなければと思ってやったのだが、それでも遅かったのだ。
腐りかけた丸太の周囲は、スポンジ状になり、そこに水を吸収してしまう。
そのため、もともと木が持っている水分以上に水分を含んだ薪になってしまっている。
だからと言って、乾かないわけでは無いが、雨に当たってしまえば水を吸収してしまい、その後、その水が乾くのには、ずいぶんと時間がかかる。
一方、切り倒したばかりの木なら、雨の水分を吸収することはなく、単に濡れるだけで、すぐに乾いてしまう。
これを解決するためには、まったく雨に当たらないようにしなければならない。
薪を割ってから、薪だなを作り、薪を並べて、屋根をかける。
そうして、乾かすようにするのだが、屋根と言っても、上部にブルーシートなどをかけておくだけで、横は完全に開いている。
雨が、常に真上から降るというわけでは無いため、必ず、横の切り口に雨が当たる。
切ったばかりの薪ならそれで良いが、腐りかけて、スポンジ状の部分ができてしまった木では、これではダメだった。
結局、石油ストーブを出してきた
山に来た当初、石油ストーブを買った。
それも三つ。
最初に買ったものは、大は小を兼ねるだろうってことで、大きめのものを買った。
これは、断熱性の低い僕の山小屋では、広さの割に大きめのものを用意した方が良いだろうと考えたからだ。
それに、山だから、住宅街よりも冷えるだろし、特に、最初の冬は寒かった。
しかし、それでも大きすぎた。
火力を最も小さくしても熱い、暑すぎた。
結局、付けっぱなしではいられず、切ったり付けたりを繰り返さなくてならなかった。
すると、切るたび、付けるたびに、匂いが出る。
家庭用の小さなものは、匂いが出ないような機能がついているのだが、大きめのものを買ったせいで、そうした機能がなかった。
そのため、買い換えることにした。
次に買ったのは、6畳用の最も小さなものだ。
ホットカーペットもオイルヒーターもあるので、これでも十分かもしれないと考えたのだ。
しかし、今度は小さすぎた。
全開で付けていても寒い。
ホットカーペットも全開で付けていたが、やはり寒い。
オイルヒーターも付けたが、寒い。
結局、三台目を購入。
これで、ちょうどよかった。
大きさは、8畳用。
この小屋の広さが7.5畳なので、結局、ジャストサイズでよかったってことである。
腐りかけの薪もなんとか使う
せっかく作った薪なので、これも、どうにか使う方法を考えた。
まずは、火がつかないわけではなく、煙がすごいことが室内で使えない大きな原因なので、外で使えば大丈夫だってこと。
「煙突があるんだから室内でも大丈夫なんじゃないの?」と、思うかもしれないが、そう簡単にはいかないもので、煙突の隙間や、薪ストーブの吸気口からも煙が少しづつ出てきて、結果、部屋の中が煙臭くなってしまうのだ。
ってことで、風呂炊きと、外での調理や暖とりのために使う。
最近、住んでいる小屋の横に、大きな屋根を建設している。
今までは、タープを張っていたのだが、丸太を組んでポリカ波板の屋根を設置する。
それに伴い、外用の薪ストーブも導入。
これは、山友たちからの提供である。
そのおかげで、冬でも外でたらいうどんを食べたり、おでんをつついたりしているのだ。
なので、せっかく割った薪が無駄になることはないのだが、室内で使える新たな方法も考えついた。
それは、一気に燃やそうとしないで、ブスブスと燻らせながら燃やせば良いってことがわかった。
まずは、火をきっちりと付ける。
最初は、燃える木を使って火をしっかりと付ける。
ここで点かないと、あとの薪がまったく燃えずに、火が消えてしまうだけなので意味なくなってしまう。
そして、ダメそうな薪をいっぺんに詰め込んでおく。
扉を閉めて、吸気口も閉め、上部にある二次燃焼用の吸気口を半分程度開けておく。
すると、通常、乾いた薪であれば、そのまま燃え続けるが、湿っているので、火は見えなくなってしまう。
しかし、薪は赤くじんわりと燃え続ける。
そして、このまま、薪が完全に燃え尽きて、火が完全に消えるまで放っておく。
これは、薪ストーブを痛める原因の一つであるが、まあ、それは良い。
こうすることで、夕方に火を入れれば、あとは、明け方までじんわりと50度程度の温度を保ちながら燃え続ける。
そのため、明け方でも寒くないのだ。
硬い広葉樹の薪であれば、燃え方がゆっくりのため、寝る前に薪をいくつか投入しておけば、通常でも朝までほんのりと暖かさを維持するが、うちにある薪のほとんどは、杉やヒノキなので、すぐに燃え尽きしてしまうのである。
しかし、今回のやり方なら、腐りかけの薪でも、じんわりと火が入り、木の水分を飛ばしながら、ゆっくりと燃えていき、結果、朝までほんのりとした暖かさを提供してくれるので、役に立っている。
やはり、ハイブリッドライフが良い
薪ストーブしかなかったら、今回のような薪の状態では、寒くて凍えてしまう。
しかし、石油ストーブもあるし、エアコンも、ホットカーペットも、オイルヒーターもある。
これだけあれば、たとえ、薪ストーブに火がつかなくても、なんの問題もない。
五右衛門風呂だって、薪で焚いているが、深夜電気温水器だってついている。
不便なものを使いながらも、それを不便と思わずに楽しんで使っている。
しかし、一旦、それが使えないとなれば、現代文明の商品を利用すれば良い。
方や、現代文明に全てを委ねてしまっていては、いざというときに、とんでもなく困る事態になる。
ほとんどの製品は、電気を使う。
そのため、停電になったら、即終了である。
石油ストーブであれば電気はいらないが、同じ石油を使うものでも、ファンヒーターでは電気が要る。
メインの石油はあるのに、少しの電気がないだけで使い物にならなくなってしまうのは、とてつもなく虚しいだろう。
電気・ガス・上水道に頼り切ってしまう生活は、何事もなければ便利だろうが、数十年に一回は、なんらかの災害が起こるものだ。
そんな時には、原始人以下の生活を余儀なくされる。
もちろん、そんな生活であっても数日で終わりを告げられるが、それでも、その時は、あまりにも無様である。
これが、大災害や戦争で何週間も何ヶ月もインフラが復旧しないとしたら、今のコロナとはまた違った苦難が人々を襲う。
しかし、原始的な生活をしている人たちや、僕のようなハイブリッドライフを送っている人たちには、そんな大災害でもどうということはない。
たとえ電気が止まっても、使えないのはパソコンくらい。
スマホの充電は、車のバッテリーからインバーターを使って100Vを取れるし、食べ物は、畑に生えている。
冷蔵庫は、土を掘れば、夏でも15度程度には保てるし、水はあるし、ガスはボンベだ。
冬の暖は、もちろん薪で、風呂も問題ない。
人に勧められるほど簡単にできるものではないが、せめて、電気が止まっても大丈夫なのように、ソーラーなどでの自家発電と蓄電。
上水道が停止しても大丈夫なように、井戸を掘る、冬の暖房用に安いものであっても薪ストーブ、都市ガスだったら、カセットコンロくらいは常備したいだろう。
キャンプをするような人々であれば、そうした災害時には強いかもしない。
災害は、必ず来る、100%来る、現代の人々は、そうしたことをすぐに忘れてしまう。
2013年3月11日、東日本大震災を経験した時、多くの人が災害への備えを行った。
あれから8年が経とうとするが、あの頃のように準備し続けている人たちは、一体、どの程度いるのやら?
ほとんどが、備蓄などしなくなっただろうし、緊急持ち出し袋なんて、どこにいっちゃったかなぁ?という具合だろう。
僕は、忘れる能力が高い。
要するに、すぐに、なんでも忘れてしまう。
しかし、世間の人たちの方が、もっと、忘れる能力が高いのではないかと思ってしまう。
あっ、腐りかけの薪の話だった。
けど、まあいいか。