この山に来て初めて、怖い夢を見たかもしれない。
そして、目が覚めた。
朝、4:30
まだ、外は真っ暗だ。
祭りの帰りの肝試し(ではないが)のことや、昨晩、モデルガンを買おうかなどと、考えていたことが影響したのだろうか?
ここに来て、いろいろなことがあり、あまり意識はしていなかったが、見知らぬ人が良からぬ思いでここに来る可能性がないとは考えられない。
そんなことを思うと、4:30なので怖いじゃないか!
明かりをつけると、蝉が窓ガラスにむかって突進してきて、バシッ!バシッ!と音がする。
原因を知っていなかったら、これもまた怖い。
さて、気を取り直して、ノートを出して、可能性というものを考えてみた。
まず、ここに来るだろうか?
ということ。
ここに来るには、一本道を上がってこなければならない。
抜ける場所はないので、知っている人は来ることはないだろう。
道を知らない人が、ここにたどり着く可能性としては低い。
なぜなら、来るルートは、主に二本。
一本は、住宅街や商店街の中を通るから、そうした道を通れば、すぐに誰かに見られてしまう。
もう一本は、あまり民家のない道だが、途中、わかりにくい場所を曲がる必要がある。
知っていなければ、その道を曲がることができる可能性は、とても低い。
それでも、偶然にでも山に入ってしまったとしよう。
すると、今度は、途中にいくつも無人の倉庫がある。
そうなれば、わざわざ、最も奥まで来ようとするだろうか?
車やバイクだったら、谷に落ちそうになりながら奥の奥を目指す?
それよりも、途中の脇道を入る方が選択肢として有り得るだろう。
では、徒歩なら?
途中の倉庫に身を隠す方がいい。
1.5kmの道のりは、やはり怖いからね。
それでも、それでも、ここまでたどり着いたら?
まずは、人感センサーが反応することに気がつくだろう。
昼間は、センサーが反応して、LEDが点いても気がつかないが、夜は、周りが真っ暗な中で、LEDが煌々とつくので、徒歩なら100%気がつくし、車でも気がつく可能性は高い。
そうすると、これより奥には何かがあると感じるだろう。
そして、逆に引き返す可能性が高いかもしれない。
だいたい、この山奥に、人感センサーがつけられているなんて、上にあるのは、単なる山小屋ではないことを示しているようなものだ。
きっと、上がってくる犯罪者よりも、もっとヤバい奴が上にいると思うのが普通だろう。
そうだったとして、上がってきたらだろうするか?
上がってくると、まず、倉庫がある。
そして、そこには、電撃殺虫器が、紫色の光を放っているので、人がいそうな雰囲気がある。
犯罪者が、食べ物などを探していて、人がいたとしても脅したり、襲ったりすればいいと考えていたとしたら、上まで上がってくるだろう。
しかし、人感センサーを仕掛けている、山奥に暮らす人間といえば、普通に考えると、そいつこそ犯罪者ではなかったとしても、ランボーかスタローンか、はたまたゴルゴ13のような、筋骨隆々の特殊な職業の奴としか思えない。
それでも、なんでも、上がってきちゃったらどうするか?
まず、どんな奴が来るか考えてみた。
普通の人が道に迷って来ることはないので、夜来る人といえば、犯罪者だろうと思う。
そして、単なるドロボーだとしたら、こんなところまでは来ない。
殺人などの凶悪犯としか考えられない。
しかし、計画的犯行だったり、複数犯だったとしたら、ここまで来るのは逆にリスクだ。
人に見られる可能性は十分にあるし、何と言っても、先に逃げ場がないので、山という檻に入ってしまうようなものだ。
なので、考えられるとすれば、単独犯で、あまり深いことは考えずに来てしまったというところだろう。
もしも、複数犯だっとしても多くて三人というところだろう。
そして、武器は?
銃というのはあまり考えられない。
日本で銃を手に入れるのは簡単ではないから、銃を手に入れるくらい面倒なことをやっている犯罪者であれば、その後のことも考えているだろうから、こんなところまで来て籠城するようなことはないだろう。
そう考えると、いいとこナイフだと思う。
単独犯で、ナイフ一本、それも、上まで真っ暗中を上がってきている。
車やバイクよりも、徒歩の可能性が高いだろうから、緊張と疲れはピークに達しているだろう。
そう思うと、対処と制圧は、全く難しいことではない気がしてきた。
クラヴマガで、散々やった。 ナイフに対するディフェンス。
下手くそだったけど、それでも、対処法は、身体が覚えているだろう。
さらに、金蹴りを始めとする、その後の打撃による制圧も、散々やった。
そう考えると、相手よりも十二分に有利だ。
こっちに、武器など全くいらず、素手で十分に対応出来る。
あー、クラヴマガやっててよかった。
<護身術・フィットネスとか書いてるけど、接近戦闘術ですよ>
こんな事態は、可能性としては、ほぼゼロ%だろうが、もしも!と考えたときの安心感は半端ない。
見た目は、ランボーやスタローンのようではないし、ゴルゴのように武器もない。
しかし、やってきたことは、接近戦闘術なのだ。
ほんの、1年2ヶ月だったとしても、全くやっていない人たちと比べれば、十分だ。
こんなことを、グダグダと考えて、書いていたら、すでに6:00
もう、あたりは明るい。
今夜は、そんな奴は来なかったし、来ても十分対処可能だということがわかったよ。
よかった。
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